芥川龍之介の『蜘蛛の糸』で地獄にいたカンダタは目の前に垂れてきた蜘蛛の糸を手繰り一縷の望みにかけて極楽を目指すが、途中ふと下に目をやると他の地獄にいた罪人たちが自分と同じように糸を上ってきているのが見えて「こら、罪人ども。この蜘蛛の糸は己おれのものだぞ。お前たちは一体誰に尋きいて、のぼって来た。下りろ。下りろ。」と言った瞬間、糸が切れて再び地獄に落ちる。
もちろん蜘蛛の糸が切れた理由は、糸が細かったからでもなければ他の罪人たちの重さで切れたワケでもない。
フォーカスが外れたから
カンダタは当初、自分が地獄から脱し極楽に向かうことのみに集中していた。
極楽まで途方もない距離かもしれないが、それまではどれだけ上っても糸が切れることはなかった。
しかし途中、他の罪人たちが上ってきているのが見えると、他者にフォーカスが移ってしまい、糸が切れてしまった。
焦点が「自分」から「他者」に移った途端糸が切れたのだ。
我々の日常でもフォーカスが「自分」から「他者」に移った瞬間、集中力が途切れ思ったようなパフォーマンスが出せなくなってしまうことが往々にしてある。
エゴにとらわれたから
カンダタは下から上ってきている他の罪人たちにフォーカスが移った途端、「自分だけが助かりたい。自分さえ救われればよい」というエゴにとらわれた。
「自分さえ…」「自分だけが…」という考え方は、裏を返せば「他者」を意識していることになる。
大事なのは今に集中すること。
目の前のことに全身全霊をかけること。
カンダタも「ただ目の前に垂らされた蜘蛛の糸を上りきること」に集中していたら極楽に辿りつけたのかもしれない。
余談
ジョロウグモはなんだか毒々しいけどハエトリグモは足とかムチムチしててカワイイ☺
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